助成レポート 社会課題

【助成担当レポート】依存症からの回復を望む人が、孤立せず、地域で暮らし続けるために(通所施設と相談支援)

助成事業の概要

薬物等の依存症者の入寮施設「群馬ダルク」が、通所施設「トゥデイ」を開所するのに合わせて、通所向けプログラムの開発と相談支援の強化を図ることで、依存症の“重症化のスパイラル”を改善する試みを始めました。この企画に対して、群馬県共同募金会では、平成30年度助成から3年間、支援を続けています。

依存症について

日本の依存症患者数は10万人以上、潜在数はその数十倍ともいわれています。
依存症と認識することができず、問題を抱えたまま周囲から孤立してしまう人がたくさんいます。
依存症は「孤独の病気」とも言われています。「学校や職場、家庭などとうまくなじめない」といった孤独感や「自分に自信が持てない」などの不安や焦りからアルコールや薬物、ギャンブルなどに頼るようになり、依存症となってさらに孤立が深まる…そんなスパイラルの中で、誰にも相談できず悩み続けます。
(依存症は脳の仕組みが関係していると言われています。詳しくは厚生労働省のホームページをご覧ください。)

群馬ダルクについて

群馬ダルクは入寮施設として2006(平成18)年6月に高崎市日高町に開設しました。
古い日本家屋を借りて、20名ほどの人数で、生活を共にしながら運営しています。
スタッフも依存症経験者で、共感的に理解を深め合いながら伴走支援します。
公的補助はなく、利用料と寄付金、民間助成金などが財源で、運営が厳しい状況です。

共同募金助成事業の詳細

依存症回復支援の現状と課題

依存症は意志や倫理の問題ではなく、病気です。
そういった認識が社会にも本人にも少なく、気づいてやっと治療につながったときには重症化してしまっていた…そんなケースが数多く見受けられます。
最近では、心の病などの処方薬で、依存症になっていることに気づかずに重症化する人も増えているそうです。
回復を求めてダルクにつながる人の多くは、そういった過程で重症化した人たちです。
群馬ダルクでは、かねてから予定していた通所施設のオープンに合わせて、この“重症化のスパイラル”の改善を目指して、事業を企画しました。

負のスパイラルを断ち切るために

通所施設に合った回復支援プログラムの開発
依存症の支援は、その人の生活そのものの支援です。朝起きて一日過ごし、夜眠るときに「今日も一日依存しないで済んだ」と振り返ってまた朝を迎える。その繰り返しを、依存症を抱える仲間同士で支え合います。
“日中だけ”通所施設で薬物等から離れられても、家に帰ってまた“孤独”に戻ってしまって…となる恐れがあります。
入寮施設利用者の日中活動の場として通所施設をスタートしましたが、それを機に、通所だけの人も受け入れていこう、と決めました。難しいチャレンジかもしれませんが、それでも、その人が孤立せず、社会や地域とつながりながら回復を目指せれば…との思いからです。重症化しないうちに通所してもらうことで、依存症回復支援の“ハードルを下げる”狙いもあります。
群馬ダルクにはアメリカのプログラムを日本向けに改良して取り組んでいて、現在は49もの回復支援プログラムを有しています。その中から通所でも取り組みやすいものを選び、その人が回復を諦めずに「またここに来よう」と思えるよう、寄り添って支援しています。

依存の代替としてのスポーツプログラム

メールでの相談受付
どんな些細なことでも相談してほしい、そんな思いからホームページをリニューアルしたところ、メールでの問い合わせが増えています。また家族からの電話相談も増え、通所施設の見学や利用につながっています。入寮施設につながるのは依存症専門病院や刑務所からがほとんどだったので、通所施設に関心を持ちメールで相談できるという“回復の入口”を設けたことは、重症化防止への大きな一歩となりそうです。

依存症の理解を促す「依存症講座」を継続開催
依存症のことを正しく理解してほしい、また現状を知ってほしい、そんな思いから「依存症講座」を開催しています。令和元年度も年4回、通算で11回の開催です。関係機関・専門職・家族など多分野からの参加があり、繰り返し開催することで自然と“ネットワークのようなつながり”が形成されつつあります。
また、そのつながりから、講演依頼が増えています。中学・高校・大学など若者への講演や、人権啓発に関する行事での講演、また全国各地のダルクや家族会からも講演依頼やプログラム提供依頼が来るようになりました。

鳥取ダルクへプログラム提供

助成担当として思ったこと

県内外から講演やプログラム実施のオファーが増えてきているのは、おそらく、客観性の高い論理的・科学的なプログラムを、当事者性を大切にして目線を合わせながら実施している点にあると思います。
依存症のご本人と家族が客観的にこの病を理解しながら、当事者性ある支援によって現実を“恐れずに受容する”ことができる、この2点セットを提供できることが群馬ダルクの強みだと、改めて思いました。

通所施設トゥデイの事務所にて撮影

※ダルクDARCとは、薬物依存症者が回復するための支援施設で、Drug (薬物)のD、Addiction(嗜癖・病的依存)のA、Rehabilitation(回復)のR、Center (施設)のCを組みあわせた造語です。

※通所施設「トゥデイ」
2019(平成31)年1月、障害福祉サービス事業所トゥデイを前橋市下新田町に開設。
依存症やそれに類する問題でお困りの方をはじめ、精神障害のある方に対して、地域において自立した日常生活又は社会生活を営むことができるように生活能力の維持・向上のための訓練、生活などに関する相談及び助言などの支援を行います。

助成先情報

特定非営利活動法人 群馬ダルク
〒370-0002 群馬県高崎市日高町144
https://gunmadarc.jp/index.html
TEL 027-363-3308(月~土曜の9:30~17:00)

Copyright© 赤い羽根共同募金 , 2024 All Rights Reserved.