助成レポート 社会課題

【助成担当レポート】「学びの多様化」地域ぐるみの挑戦 ~フリースクールをハブに~

助成事業の概要

「みんなの居場所uchiサポ」は、群馬県沼田市にある社会福祉法人久仁会が運営する、家にこもりがちな小・中学生のための居場所提供・フリースクール型の支援施設です。
近年、群馬県内にもフリースクールや居場所は増えてきましたが、北毛地域ではまだまだ少ない状況です。
久仁会では、「不登校」という社会課題に対する住民や関係機関の“マインドセット”を変えていく試みも始め、多くの人に理解されながら持続的に運営できるフリースクールのあり方を模索しています。
利根沼田地域の教育関係・福祉分野の人たちが集まる研修会の様子を取材しました。

 

「地域の学びを考えよう」不登校支援 研修会のチラシ


 

不登校支援の“マインドセット”を変える試み

10月下旬、小雨が降り、県北部に位置する沼田市はもう秋の終わりを感じる寒さでした。
今回おじゃました研修会は、利根沼田地域の教育・福祉・医療・フリースクールなど関係者で立ち上げた「地域の学びを考えよう」という団体が企画運営しています。
フリースクール運営を、志ある有志の善意に委ねるだけでは、資金面・人材とも行き詰ってしまいます。
社会福祉法人久仁会では、「学びの多様化」の実現に多分野連携が欠かせないことを先進事例から学び、特に当該地域では不登校支援の広がりがまさにこれから…という状況に先手を打つべく、連携の「場づくり」から着手しました。
今回の研修会も、その一環として開催されたものです。
現役教師、ソーシャルワーカー、民生委員や地域のボランティアだけでなく、沼田市教育長や厚生労働省職員も参加し、期待の高さが窺えました。

たくさんの関係者が研修会に参加


 

「グッド&もっと」で信頼関係を築く

研修講師は、認定NPO法人育て上げネットの井村良英氏。
ご自身が取り組む小中学校でのボランティア活動や、支援ネットワークづくりの奥義を惜しみなく伝授くださいました。
学校を変えるのではなく、教師と子どもたちに必要とされる活動を続けることで、学校運営にかかわる人が自然と増えていく。結果として学校が変わる。
活動を続けるためには、信頼関係を築くことが大切です。
 
この日の参加者同士の対話ルールは「グッド&もっと」。
相手に考えを伝える際に、良いことを先に伝えることで、「自分のいいところを見つけてくれる人が言うことは信頼できる」と相手が思い、より良い対話を進めることができるというものでした。
それは単にテクニックという話ではなく、相手をリスペクトし、互いを認め合うために必要なマインドセット。
支援の現場であれば、不登校というレッテルを外して、個として尊重することでその子が心を開き、信頼関係を築くことができる、ということです。

講師の井村良英さん


 

「決して一人ではない」と伝え続ける

研修会では、グループディスカッションも行われました。
参加者の小学校教員の方に感想を伺いました。
この方は教員になって3年目。不登校の児童を受け持つのは、今のクラスの子が初めてとのことでした。
「どう対応したらいいのかを知りたくて」参加。でも、グループで対話をして気づいたのは、子どもたちに「決して一人ではない」と伝え続けること。
何か特別な支援をしなければ…と考えていたけれど、シンプルに、まず一人の人間として向き合い、味方であることを伝えることが何より大切なのだと思った、とのことでした。
「今すぐできること」に気づくことができてよかった、と感想を言ってくださいました。

グループディスカッションの様子


「一人じゃない」と子どもたちに伝えたい


 

改めて初心者となり、共に学ぶ

この日、フリースクール「みんなの居場所uchiサポ」も訪問し、管理者の庭野隆さんにお話を伺いました。
庭野さんは長年、学校現場で特別支援コーディネーターも務めてきたベテラン教師ですが、不登校の児童生徒を担当したことはなかったそうです。
そんな彼が退職後、フリースクールの立ち上げを任されることになったきっかけは、現役時代に築いた地域の病院との繋がりでした。
特別支援コーディネーターとして病院の小児科と連携する中で、「退職した教員には夢がないので…」と冗談めかして言った一言が、思わぬ形で「フリースクールをお願いします」という依頼に繋がりました。
その病院は、社会福祉法人久仁会のグループ法人が経営する内田病院で、まさにフリースクール立ち上げを企画しているところだったのです。
 
教員としてはベテランでも、フリースクールという領域では初心者の庭野さん。「何が分からないのかさえ分からない」状態だったからこそ、先入観なく始められたのかもしれません。
専門家が再び初心者になる、この経験こそが、既存の枠組みの外にいる子どもたちへの深い共感と、学び続ける謙虚な姿勢の源泉となったのではと思いました。

uchiサポ外観。住宅街にあります。


uchiサポ内観。おうちのリビングのよう♪


uchiサポ管理者の庭野隆さん


 

「信頼貯金」で協力者が増えていく

フリースクールという未知の世界で、庭野さんは地道に道を切り拓いています。
より良い支援をするために教員時代に積極的に外に出て繋がりをつくってきた庭野さんを、今、いろんな方々が助けてくれます。
元同僚、教え子と保護者、病院などの支援機関。この日の研修会で受付を手伝ってくれたのはuchiサポにくる生徒の保護者。
かつてボランティアで来ていた学生は、今や提携病院の公認心理師として関わっているので、フリースクール支援で連携していきます。
uchiサポのホームページは、かつての教え子が作ってくれました。
庭野さんは現役時代も今も、常に誰かと誰かをつなげるハブの役割を担っていて、目的のために行動し人を巻き込んでいく「つなげる力」が「信頼貯金」になっています。
 

「否定されない場所」で育む自己決定の力

「学校で、否定され続けてきた子を、学校以外の場で救いたい。」
元教員として言葉にしにくい思いを、ぽつりと語ってくださいました。
特に発達に特性のある子の中には、学校という画一的な場で枠にはめられ、自分の存在をありのまま受け入れてもらえない経験を持つ子も少なくないでしょう。
自殺を考える子も決して少なくありません。
だからこそ、存在を否定されない、安心な居場所の確保が急務です。
そういった場があることでやっと、子どもが安心して「自分を肯定し、自分で選び、自分で決める力」を育むのです。
学校に戻るか、別の道を探すか。その選択も含めて、子ども自身が自分の人生を歩んでいけるように後押しすること。それこそが、自立に向けた本当の支援だと庭野さんは語ります。

小中高生の自殺者数は過去最多


 

利根沼田地域では、民間の志をハブにして、子どもの多様な学びを官民連携でつくりだそうとしています。
共同募金はこれからも、社会課題を解決するための地域での取り組みを、応援していきます。
 

「地域の学びを考えよう」仕掛人・法人本部の田辺さん♪

 

助成先情報

社会福祉法人久仁会
みんなの居場所uchiサポ
群馬県沼田市久屋原町357番地5
https://uchisapo.jimdofree.com/

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